秋季課題(情報科・数学科)
ここでは、秋季休業期間に取り組んでいただく課題についてお伝えします。内容をよく確認の上、各自で取り組んでください。質問などはいつもどおり、質問用Webフォームからお願いします。
情報科
- 課題「前期考査の復習」
下記のコメントなども参考に、各自で復習しましょう。
数学科
確認必須の連絡事項はここまでです。ここから下は、興味がある方だけどうぞ。
前期考査(情報科)の講評 (参考)
前期考査の解答は、教室で掲示します。ここではヒントやコメントなどを書いていますので、復習に取り組む参考にしてください。
[1] 著作権制度の目的(著作権法第1条)
- (1) 著作権法における「レコード」の定義は「蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)」です。CD・カセットテープ・MDなど記憶媒体そのものや、ハードディスク(HDD)・SSDのように電子機器に接続して使う機器に加え、これらを搭載したPC・スマホ・ICレコーダーなどが想定した解答です。厳密には、カッコ内にあるように、動画を記録するためのDVDやBlu-ray、ビデオ(VHS)などはレコードの定義に含まれませんが、そこまで厳密に判定する必要もないので、これらを記入していても正答としています。
- (3) 「実演家」と回答すれば十分ですが、他の解答例として「レコード製作者」「放送事業者」などもあります。ただし解答以前に、何を回答すべきかを読み取れていないと思われる答案が散見されました。回答すべきは「著作隣接権をもつ者の例」であって、「著作隣接権」を回答する設問ではありません。正しく問題文を読めていなかった場合は、「うっかり」で片付けずに各自で原因をよく分析し、同じミスを繰り返さないようにしましょう。
[2] 著作者人格権(著作権法第17条〜第20条)
- (1) 「題号」とは何か理解できているかを確認する趣旨の設問ですが、正答率は低かったです。著作物の本体以外にも権利が及ぶことを理解しておきましょう。
- (2) 条文そのものは覚えていなくても、A〜Cの条文にある「同一性を保持する権利」「公表」「著作者名」という言葉をヒントに、権利の名称を回答してほしいところです。著作権を範囲に指定していますので、権利の名称は事前に一通り押さえておきましょう。
- (4) 氏名表示権でどのような名前の表示方法を選べるかを理解しているか確認する設問です。ここでは、条文そのものが大事なわけではないので、「実名」「変名」「表示しない(匿名)」の3つを選べることが回答できていれば正答としました。そのため、1と2を逆に書いたり、3の回答欄に「公表する」と書いていたりしても正答としています。
[3] (狭い意味の)著作権(著作権法第21条〜第28条)
- (1) a.「実演権」という誤答がありましたが、日本の著作権法には「実演権」という権利はありません(アメリカや中国の著作権法にはあるようです)。
b. 編曲には同一性保持権も関係しますが、ここは狭い意味の著作権にある権利を回答する問題なので、「同一性保持権」は誤答としました。正答は「翻案権」です。
- (3) 正答は「ア(できる)」ですが、この結論に至る論理を確認する必要があります。まず、問題文に示したように、実演家には録音権(第91条)があるので、たとえ原曲の作曲者であっても、勝手に録音することはできないというのが基本原則です。ただし、私的使用のための複製(第30条)の規定があり、録音も複製に含まれるので、私的な範囲で使うだけなら録音することは可能です(といっても、コンサート鑑賞時のルール(興行者と観客の間の契約条項)として、録音が禁止されることも多いです)。本問では、特に録音を禁止するルールはないので、私的使用のための録音なら問題ないと考えられますが、ネット上にアップロードすることが私的使用ではないことは明らかなので、実演家の録音権と送信可能化権を侵害しています。従って、実演家は作曲者に対して、実演のネット上での公開を止めるよう求めることができます。
[4] 権利制限(著作権法第30条〜第50条)
- 記号問題ですが、合法な場合は「○」です。回答する記号を間違えないよう注意しましょう。
- (1) 本来は複製権(第21条)の侵害になりますが、自分で書き込んで使うだけであれば私的使用のための複製(第30条)にあたるので、問題ありません。
- (2) まず、テレビ番組の動画を勝手にアップロードすることは公衆送信権の侵害です。アップロードされた動画を視聴する行為は、たとえYouTubeなどのようにその場でストリーミング再生する場合でも、一旦は動画データを受信するので、複製行為にあたります。通常は、このような動画の視聴に伴う複製は私的使用のための複製(第30条)にあたりますが、違法にアップロードされた動画の場合、第30条の三にあるように、私的使用とはみなされません。従って、複製権の侵害となります。
- (3) 本来は上映権(第22条の2)の侵害になりますが、無料の上映会については営利を目的としない上演等(第38条)にあたるので、問題ありません。自宅だけでなく、公民館やホールなどでの上映会も可能ですが、家庭での使用を前提として販売されているDVDなどの上映は、問題がないか注意が必要です(「家庭以外で使わない」という表記に同意して購入したとみなされるため)。
- (4) 本来は複製権(第21条)の侵害になりますが、自分で聴くだけであれば私的使用のための複製(第30条)にあたるので、問題ありません。ただし、図書館など貸し出し元の規則で複製行為を禁止している場合があるので、注意しましょう。
- (5) 技術的保護手段を回避しての複製は、たとえ保管目的であっても私的使用のための複製(第30条)の例外(第30条のニ)にあたるので、複製権の侵害となります。現在市販されているDVDやBlu-rayの多くには、このような保護が施されています。
[5] 保護期間(著作権法第51条〜第58条)
- 本問の場合、通常の保護期間の規定(第51条)にあるとおり、川端康成の死後70年までが保護期間です。
- 川端康成はペンネームではなく本名ですが、ペンネームで公表された著作物については「著作物の公表後七十年」または「死後七十年」のうち早い方(第52条)であるという条文があります。ただしこの条文は、「変名の著作物における著作者の変名がその者のものとして周知のものであるとき」は適用されない(第52条の2)ので、ペンネームの作家でもどこの誰か分かっている場合は、死後70年とする第51条が適用されます。
- 本問は「保護期間が終了する時期」と「パブリックドメインであるか否か」の2つを答える問題にしていますが、片方のみ回答した答案がありました。何を回答するのか、問題文をよく読んでから回答しましょう。
- なお、音楽ではなく小説を題材にしているのは、一部の国の作曲家については戦時加算という制度(敗戦国に対するペナルティとして、著作権の保護期間が通常より長く設定される)があり、問題が複雑になってしまうことが理由です(参考:JASRAC「著作権保護期間の戦時加算とは?」)。
- (参考) Prokofiev(1953年没)の楽曲の著作権
Prokofievはロシア人なので、本来なら彼の曲に戦時加算は適用されませんが、自身の楽曲管理をフランスの団体に委託していることと、アメリカに亡命していた期間があることで、大半の作品は戦時加算の対象です。日本の旧法(2018年まで適用)では保護期間は死後50年とされていたので、この法に従えば$1953+50=2003$(年)には著作権が切れるはずですが、約10年分の戦時加算があり、$2003+10=2013$(年)までは保護期間が続いていました。一度切れた著作権は復活しない(映画「ローマの休日」と同じパターンです)ので、日本ではProkofievの作品の著作権は切れています。
しかし、以前から保護期間が死後70年だったアメリカやEUの国では、$1953+70=2023$(年)までは保護期間内なので、まだ著作権が残っています。そのため、海外での演奏やネット配信の際には注意が必要です。IMSLPのページでも、Prokofievの楽曲は公開されているものの、ページ上部に注意書きが付されています(以前にProkofievの権利管理者からIMSLPに対して警告が届いた結果のようです)。なお、IMSLPのページには「著作権期間が死後50年の国々 (中国、日本、韓国、その他世界中の他の多くの国々) では、パブリックドメイン」とありますが、日本の場合は「著作権期間が死後50年だった」が正しいです)。
[6] 親告罪(著作権法第123条)
利点・欠点とも、設問で求める内容であれば広く正答としていますが、親告罪の趣旨をよく理解していた答案が多くありました。
利点の回答欄より:
- 著作権の侵害を罪にする基準を、著作権者の判断に委ねることが出来ること
- (著作者)本人が許可した範囲であれば自由に著作物を使うことができる
- (著作物が)勝手に世の中に広まってくれる可能性がある
- 著作者本人が許可しているのに検察による誤起訴がなくなる点
- 検察などが監視するという仕事が減る
欠点の回答欄より:
- (著作者)本人しか告訴ができないので、本人の見えない範囲で行われている著作権の侵害を訴えることができない
- 著作権に対しての考えが世間では甘く考えられる
- 法律を守らない人が増えやすいこと
- 何らかの圧力で告訴したいのに出来ないときに検察が動いてくれない
- 勇気がない人は告訴しにくい点
[7] 知的財産権
- (2) 本問の趣旨は「正しい」音商標の例を挙げられるかを確認することです。採点にあたり特許庁のj-PlatPatを確認していますが、「その場で思いついた音がj-Platpatに登録されているか」という出題は、試験の問題としては適切ではありません。そうではなく、本問は知識として音商標の例を挙げることができるかを聞いています。「たまたま当たった」という人は、ぜひ音商標の例をいくつか覚えておいてください。
- (参考) デイリーポータルZ「「ファミマ入店音」の正式なタイトルは「大盛況」に決まりました」
- (参考) 特許庁j-PlatPat「商標出願2016-089525(♪あなたとコンビニファミリーマート)」
総評
- 著作権の問題は難題とされることが多いですが、意識を高く持ってよく準備して試験に臨んでいると思われる答案が多くありました。授業で扱ってから時間も経っているので、勉強した人が多いことが分かる結果になったと思います。
- 一方で、試験に向けて準備をしていたのか疑問に思える答案もありました。どのような権利があるか理解することは、他者の作品を使う上での基本であり、他者に対して敬意を払うことでもあります。インターネットで多くの知識を得られる現代において「知識がない」ということは、「知識を身につけようとする姿勢がない」ということと同義です。著作物を扱う仕事を生業とするからには、最低限の知識や考え方を身につけておきましょう。
- 情報科・数学科とも課題は少なめにし、小テストも前期は実施せず、考査の回数も最低限にしています。しかし、他教科と同様に、各回の授業に対して予習や復習をすべきです。高校の授業は、「授業時に教室にいれば内容をすべて理解できて、宿題がなければ次の授業まで何もしなくてよい」というものではありません。「予習や復習が不十分であれば、成績は着実に下がっていく」ということも考慮して、各自の状況に合わせた学習計画を作成し、実践してください。
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