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Section 2.4 展開と因数分解

Subsection 2.4.1 計算法則

四則演算のうち加法と乗法では、計算法則と呼ばれる次の法則が成り立つ。計算や証明を行うときには、この計算法則を活用することが基本となる。

これらの計算法則は、加法や乗法以外の、減法や除法では成り立たない。また、文字の列(文字列)について「カイ」と「イカ」が異なるように、数学以外の世界でも、交換法則が成り立たないことが多い。 また、結合法則が成り立つことで、3つ以上の数の和や積を考える場合も順序を考慮しなくて良くなる。そのため、括弧を書かずに和や積を\(a + b + c\)や\(abc\)と書くことができるようになる。

Subsection 2.4.2 展開と因数分解

計算法則を利用して式変形することで、便利な公式が得られることがある。

\begin{align*} (a + b)(c + d) &= (a + b)c + (a + b)d & (\text{分配法則})\\ &= ac + bc + ad + bd & (\text{分配法則})\\ &= ac + ad + bc + bd & (\text{加法の交換法則}) \end{align*}

計算法則を利用した式変形の例として、展開や因数分解がある。

\((a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2\)は次のように示される。他も同様。
\begin{align*} (a + b)^2 &= (a + b)(a + b)\\ &= aa + ab + ba + bb\\ &= aa + ab + ab + bb & (\text{乗法の交換法則})\\ &= aa + 2ab + bb\\ &= a^2 + 2ab + b^2 \end{align*}

Subsection 2.4.3 襷掛けによる因数分解

特に因数分解は、方程式の解を求めるときに用いられる。式を因数分解して\((x - a)(x - b) = 0\)の形に変形できれば、\(x - a = 0\)か\(x - b = 0\)の少なくとも一方が成り立つ。 \(x\)は同時に2つの値をとることはできないので、\(x = a\)または\(x = b\)となり、方程式を満たす\(x\)の値を求められる。 ここでは、「\(AB = 0\)であれば\(A = 0\)か\(B = 0\)の少なくとも一方が0である」ことを用いている。

より高度な因数分解として、襷掛け(たすきがけ)と呼ばれる、次の式に基づく因数分解がある。

\begin{align*} (ax + b)(cx + d) &= axcx + axd + bcx + bd\\ &= acx^2 + adx + bcx + bd & (\text{乗法の交換法則})\\ &= acx^2 + (ad + bc)x + bd & (\text{分配法則}) \end{align*}

この等式は、展開を行う場合には普通に展開しているのとほぼ変わらないため、あまり役立たない。 因数分解を行う場合には、\(a, b, c, d\)が比較的小さな数や簡単な式である場合は、次に示す襷掛けという方法で因数分解を行うことができる。

襷掛けの手順を図2.21に示す。

2.21. 襷掛けの手順

Subsection 2.4.4 解の公式の利用

襷掛けは\(a, b, c, d\)が比較的小さな数や簡単な式である場合は便利な方法だが、そうでない場合は、次に示す2次方程式の解の公式を用いる方が早いことも多い。