Section 5.2 三角関数
Subsection 5.2.1 三角比
\(\angle ABC = 90 ^ \circ\)となる直角三角形\(\triangle ABC\)を考える。 このとき、直角でない残りの2つの角のうち一つの角度と、直角三角形の斜辺の長さが分かれば、\(\triangle ABC\)はただ一つに定まる。
定理 5.8. 直角三角形の辺の比の一意性.
\(\angle B = 90^\circ\)となる直角三角形\(\triangle ABC\)では、\(\frac{BC}{CA}, \frac{AB}{CA}, \frac{BC}{AB}\)の値は三角形によらず、\(\angle A\)の大きさのみによって定まる。証明.
この定理により、直角三角形の辺の比はどの三角形でも、\(\angle A\)の大きさのみによって定まることが分かる。 従って、直角三角形の辺の比を、\(\angle A\)によって定まる関数として定義できる。
定義 5.10. 三角比.
\(\angle ABC = 90 ^ \circ\)の\(\triangle ABC\)において、\(\theta = \angle A, x = AB, y = BC, r = CA\)とおく。 このとき、各辺の比を三角比といい、次のように定義する。\(\sin(\theta) = \frac{y}{r} = \frac{BC}{CA} = \frac{\text{対辺}}{\text{斜辺}}\)を、\(\angle A\)の正弦(sine)またはサインという。
\(\cos(\theta) = \frac{x}{r} = \frac{AB}{CA} = \frac{\text{底辺}}{\text{斜辺}}\)を、\(\angle A\)の余弦(cosine)またはコサインという。
\(\tan(\theta) = \frac{y}{x} = \frac{BC}{AB} = \frac{\text{対辺}}{\text{底辺}}\)を、\(\angle A\)の正接(tangent)またはタンジェントという。
三角関数の値は実数だが、正確に表すのが困難な無理数になり、求められないことが多い。そのため、三角関数の値を調べるときには、三角比の表を参照することが多い。 ただし、直角三角形のうちには辺の比が\(1 : 2 : \sqrt{3}\)や\(1 : 1 : \sqrt{2}\)となる有名なものがある。そのため、幾つかの角度については、三角関数は簡単に表せる数となる。
例 5.12. 鋭角の三角関数の値.
Subsection 5.2.2 三角関数
鋭角以外の角でも三角関数を拡張するために、\(xy\)平面上に図のような円をとり、座標平面上で三角関数の値を定義する。
定義 5.13. 三角関数.
原点\(O\)を中心とする半径\(r\)の円上に点\(P(x,y)\)をとり、線分\(OP\)と\(x\)軸がなす角度を\(\theta\)とする。 このとき、次のように三角関数を定義する。定理 5.15. 三角関数と座標平面.
\(x = r\cos\theta, y = r\sin\theta, y = (\tan\theta) x\)と変形できる。特に、\(r = 1\)の円(単位円)では、三角関数は\(xy\)平面上で次の意味をもつ。原点を中心とする単位円上で\(x\)軸と角度\(\theta\)をなす点は\((\cos\theta, \sin\theta)\)で表せるので、\(\cos\)は\(x\)座標、\(\sin\)は\(y\)座標を表す。
原点を通り\(x\)軸と角度\(\theta\)をなす直線は\(y = (\tan\theta) x\)と表せるので、\(\tan\)は直線の傾きを表す。
各象限での三角関数の符号は表5.16のようになり、これらをグラフにすると図5.17のような周期関数になる。
グラフから明らかなように、\(\sin\theta, \cos\theta\)の周期は\(2\pi\)、\(\tan\theta\)の周期は\(\pi\)である。 \(y = \sin\theta, y = \tan\theta\)は原点について対称な奇関数、\(y = \cos\theta\)は\(y\)軸について対称な偶関数である。 また、\(y = \tan\theta\)のグラフは直線\(\theta = (n+\frac{1}{2})\pi (n \in \mathbb{Z})\)を漸近線としてもつ。
象限 | 第一象限 | 第二象限 | 第三象限 | 第四象限 | |||||
\(\theta (rad)\) | \(0\) | \(0 < \theta < \frac{\pi}{2}\) | \(\frac{\pi}{2}\) | \(\frac{\pi}{2} < \theta < \pi\) | \(\pi\) | \(\pi < \theta < \frac{3}{2}\pi\) | \(\frac{3}{2}\pi\) | \(\frac{3}{2}\pi < \theta < 2\pi\) | \(2\pi\) |
\(\theta^\circ\) | \(0^\circ\) | \(0^\circ < \theta < 90^\circ\) | \(90^\circ\) | \(90^\circ < \theta < 180^\circ\) | \(180^\circ\) | \(180^\circ < \theta < 270^\circ\) | \(270^\circ\) | \(270^\circ < \theta < 360^\circ\) | \(360^\circ\) |
\(\sin\theta\) | \(0\) | \(+\) | \(1\) | \(+\) | \(0\) | \(-\) | \(-1\) | \(-\) | \(0\) |
\(\cos\theta\) | \(1\) | \(+\) | \(0\) | \(-\) | \(-1\) | \(-\) | \(0\) | \(+\) | \(1\) |
\(\tan\theta\) | \(0\) | \(+\) | \(\times\) | \(-\) | \(0\) | \(+\) | \(\times\) | \(-\) | \(0\) |