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Section 4.1 写像と関数

2つの集合の要素に対応関係が付いているとき、この対応関係を写像や関数と呼ぶ。

定義 4.1. 写像と関数.
\(A, B\)を集合とする。\(f\)が\(A\)の要素に\(B\)の要素を一つだけ対応させるとき、\(f\)を\(A\)から\(B\)への写像(map)または関数(function)といい、\(f:A \to B\)と表す。 このとき、\(A\)を\(f\)の定義域(domain)、\(B\)を\(f\)の値域(range)という。 また、写像\(f\)が\(a (\in A)\)に\(b (\in B)\)を対応させるとき、これを\(f: a \mapsto b\)または\(f(a) = b\)と表す。 このとき、\(b\)を入力(input)\(a\)に対する\(f\)の出力(output)または(value)という。

「写像」と「関数」という用語は、分野によっては使い分けることもあるが、同じだと考えても特に問題ない。また、写像を「変換」や「対応」などと呼ぶこともある。 「写像」は英語でmapまたはmappingであるが、「現実世界の地形」を「紙の上の図形」に対応づけて表したものが「地図(map)」であるので、地図と同様のものと考えることができる。 また、関数は函数とも書き、入力に対して何らかの値を出力する「函(はこ)」だと考えることもできる。

\(f: A \to B\)は、\(A\)のすべての要素に対して対応する\(B\)の要素が一つだけ存在する。 \(a (\in A)\)に対応する\(B\)の要素がなかったり、複数の要素が対応したりすることはできない。 ただし、\(B\)の要素のうち、\(A\)の要素に対応しないものはあってもよい。

果物の集合\(\text{Fruits} = \{\text{みかん}, \text{りんご}, \text{ぶどう}, \cdots\}\)を考え、果物\(x (\in \text{Fluits})\)の店頭価格を\(\text{price}(x)\)で表すとする。 例えば、\(\text{price}(\text{みかん})=80, \text{price}(\text{りんご})=90, \text{price}(\text{ぶどう})=300\)のようになる。 \(\text{price}\)は果物の集合に対して自然数を一つ対応させているので写像であり、\(\text{price}: \text{Fruits} \to \mathbb{N}\)と表せる。

関数を具体的に式の形で表せる場合は、入力を\(x\)などの変数で表して、入力\(x\)を与えたときの出力を式で書くことが多い。 このとき、定義域を\(x \in \mathbb{R}\)や\(0 \leqq x \leqq 1\)のように、入力\(x\)を用いて表すことがある。 なお、「実数の全体(\(\mathbb{R}\))」のように「考えうるすべての値」が定義域である場合は、定義域の表記を省略することも多い。

  • \(f(x) = 2x (x \in \mathbb{R})\)は関数で、定義域は\(\mathbb{R}\)、値域は\(\mathbb{R}\)である。

  • \(f(x) = x + 1 (0 \leqq x \leqq 1)\)は関数で、定義域は\(0 \leq x \leq 1\)、値域は\(1 \leq x \leq 2\)である。\(f\)は\(x = 0\)で最小となり最小値は1、\(x = 1\)で最大となり最大値は2である。

  • \(f(x)=\pm x (x \in \mathbb{R})\)は、\(x = 0\)の場合を除いて\(x\)に対応する値が\(x\)と\(-x\)の二つ存在するので、関数ではない。

関数\(f\)に入力\(x\)を与えたときの出力を\(y\)とするとき、\(y = f(x)\)という方程式が成り立つ。この方程式\(y = f(x)\)を「関数\(y = f(x)\)」と呼ぶことがある。 また、関数に名前をつけず、入力が\(x\)であるという前提で\(y = x^2 + 2x + 1\)のように書いて、これを「関数\(y = x^2 + 2x + 1\)」と呼ぶこともある。 これらの方程式の場合、関数はあくまで方程式の右辺側の式を指すのであるのが本来であり、方程式を「関数」と呼ぶのは適切な呼び方ではない。 だが、このような表記は一般的によく使われるので、注意が必要である。