Section 4.1 コミュニケーション・モデル
人間社会でのコミュニケーションは、日々さまざまな方法で行われる。 3.3.2で述べたように、コミュニケーションでやりとりされる社会情報で使われる表現には声や文字、図記号などがある。 コミュニケーションで使われるツールにも、メールやチャット、SNS、動画など多くの種類がある。 また、コミュニケーションの相手が1名であることもあれば複数名であることもあり、一方的に伝達することも、双方向でやりとりすることもある。
最も単純なコミュニケーションは二者間の相互の関係としてみなされるが、コミュニケーションがどのようなものかについて、簡潔な定義を使って説明されることは少ない。 むしろ、コミュニケーションがどのような過程から構成されるかを示す、抽象的なモデルを使って説明されることが多い。
コミュニケーションを説明するモデルには、Luhmann[24]やHall[34][35]、Chen[33]のものが挙げられる。 これらはいずれも、いくつかの段階をコミュニケーションの単位として、その反復によりコミュニケーションが継続する、と説明する点で共通している。 ここでは、Luhmannに基づくコミュニケーションのモデルを紹介する。
Luhmannは、コミュニケーション(communication)は二者間でなされる4つの選択からなる過程であり、その反復によりコミュニケーションが継続するとした[26][27][31][32]。 4つの選択は下記の通りであり、3つの選択と、それに続く1つの選択からなる。
定義 4.1. Luhmannのコミュニケーション・モデル.
送り手と受け手の間でなされる、次の4つの選択からなる過程をコミュニケーション(communication)という[26][27][31][32]。
情報の選択
表現の選択
理解の選択
理解の受容の選択
このモデルは、第3章の3つの情報概念と図4.2のように対応する。 図では、コミュニケーションの過程を矢印で、Luhmannのコミュニケーション・モデルにおける選択を実線の楕円で表している。 また、左右の点線の楕円はそれぞれ、情報の送り手と受け手が行う行為の範囲を表している。