Section 8.1 構造主義
この世界に存在する対象は、互いに孤立しているわけではなく、互いに関係し、作用して影響を及ぼすことが多い。 物質の化学反応や生命の維持、人間の思考、地域やSNSのコミュニティ、政治や経済は、いずれも要素間の相互作用を考慮しなければ、適切に分析できない。
Lévi-Straussは、要素間の関係を構造(structure)と呼んだ[53]。 構造主義では構造を重視し、対象\(A\)を要素とその関係からなるシステムとみなし、関係に注目して分析する。
定義 8.1. 構造.
集合\(V = \{ v_i | i = 1, \cdots, n \}\)の2つの要素\(v_i, v_j\)間に関係があるとき、この関係を2要素の組\((v_i, v_j)\)として表す。 関係の集合\(E = \{ (v_i, v_j) \}\)を、集合\(V\)の構造(structure)という。構造の表し方には、要素の組として表す以外に、次のように隣接行列を用いる方法もある。
定義 8.2. 隣接行列.
集合\(V = \{ v_i | i = 1, \cdots, n \}\)の2つの要素\(v_i, v_j\)間に関係がある、つまり\((v_i, v_j) \in E\)のとき\(e_{ij} = 1\)とし、それ以外のとき\(e_{ij} = 0\)とする。 このとき、\(e_{ij}\)を次のように並べた行列\(\boldsymbol{E} = (e_{ij})\)を、集合\(V\)の隣接行列という。
\begin{equation*}
\boldsymbol{E} = (e_{ij})
= \begin{pmatrix}
e_{11} \amp e_{12} \amp \cdots \amp e_{1n} \\
e_{21} \amp e_{22} \amp \cdots \amp e_{2n} \\
\vdots \amp \vdots \amp \ddots \amp \vdots \\
e_{n1} \amp e_{n2} \amp \cdots \amp e_{nn} \\
\end{pmatrix} \
\left( e_{ij} = \begin{cases}
1 \amp ((v_i, v_j) \in E) \\
0 \amp ((v_i, v_j) \notin E) \\
\end{cases} \right)
\end{equation*}
より一般的に、\(e_{ij}\)の値を非負の実数とすることもある。このとき、\(e_{ij}\)は関係\((v_i, v_j)\)の大きさや強さ、広さなどを表すことができるので、\((v_i, v_j)\)の容量(capacity)という。