Section 10.2 意図と予期
介入は明確な目的を持って行われるコミュニケーションであり、このコミュニケーションを行う目的を意図(intent)と呼ぶ。 4.2節で述べた表現の選択や理解の選択において、情報や意図と表現の関係は、次の等式で表される。
\begin{equation*}
(\text{情報}) + (\text{意図}) = (\text{表現})
\end{equation*}
送り手による表現の選択は、この等式の左辺から右辺への変換であり、情報だけでなく意図を含む表現を行うことが重要である。 また、受け手による理解の選択は、この等式の右辺から左辺への変換であり、表現から情報と送り手の意図を正しく区別できることが重要である。 Luhmannによれば、表現に含まれる情報と送り手の意図を正しく区別して認識することが、正しい理解だという[31]。
3.4節で述べた情報の主観性により、送り手の意図や伝えたい情報が受け手に正しく伝わる保証はない。 そのため、送り手が正しく自らの意図を伝えようとするには、できるだけ受け手の反応を想定し、理解しやすい形で伝えることが必要である。
また、明示的か暗示的かを問わず、介入は対象者なしには成り立たない。 対象者が意識するとしないとに関わらず、意図を予期させることができなければ、介入は唐突さや強引さを感じさせるため、成功しにくい。 介入にあたっては、必要であれば段階を設けて対象者に展開を予期させ、違和感なく意図に従えるようにすることが重要である。