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Section 11.1 論理の目的

行った説明や主張に対して他者の同意を得るには、自分と相手で共有できる価値観、すなわち成果メディアが不可欠である。 愛や芸術、宗教、権力などで納得を得られる場合でなければ、相手と共有できる真理に基づき、自分の主張の「正しさ」を示すことで相手を説得する必要がある。 この、真理に基づいてある主張の「正しさ」を説明する過程を論理(logic)と呼ぶ。

物事の「正しさ」を検証するのが人間である以上、ある物事が絶対に正しいことを検証する手段は存在しない。 実験で正しさを裏付けると思われる結果が得られても、事前の準備や事後の分析で誤りが生じている可能性は否定できない。 数学の定理でも、その定理を導く論理に誤りがあるかは人間が検証する以上、検証する人間が誤りを見過ごすことは当然にありえる。 実験や証明を機械化し、プログラムに正しさの判断を委ねても、プログラム自体やハードウェアに欠陥がある場合もありうる。 あくまで、多数の人間や機械の検証を経ることで、その物事が誤りである可能性を小さくしているだけである。 従って、「正しい」とされる物事も、それはまだ有力な反論が存在しないことを示しているに過ぎない。

物事の「正しさ」の検証にあっては、論理であれば他者の立場でも納得できる客観性が求められる。 実験や調査であれば、他者が同じ実験や調査を再度行っても、同じ結果が得られる再現性が必要である。 客観性や再現性のない記述は、たとえそれが本当は正しい真理であったとしても、検証できないために正しいとはみなされない