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Section 3.1 情報の歴史

1.1節の通り、「情報」の存在が顕在化したのは、人類の歴史の長さから見ればつい最近のことである。 現代では、学者、企業人、教育者、政治家から一般の人々まで、様々な立場の人がいろいろな意味で「情報」の語を使っている。 例えば、花を撮影した写真を印刷したとき、印刷された「紙」を「情報」という人や、印刷された「写真」を「情報」という人がいる一方、撮影された「花」を「情報」という人もいる。 これらはすべて「情報」だとする人がいる一方で、「写真」と「花」はかなり性質が異なるため、写真は「情報」だが花は「情報」ではない、という人もいる。 このように、「情報」の語が使われるときには、人によってその意味や解釈が異なっており、その認識の違いが、「情報」に対する不明瞭さや曖昧さを引き起こしている。 各々が思い思いに「情報」を想像すると情報への理解が深まらないため、本稿ではまず、「情報」の語を定義する。

小野[10][11][12]によれば、「情報」の語源は明治時代の1876年まで遡ることができる。 当時は「情報」の語を「状の知」の省略形として使っており、「軍事作戦で自軍に対し、敵の様子を知らせること」であったという。 現在でもこうしたものを「情報」と呼ぶことがあるが、どちらかといえば、この意味は「諜報(ちょうほう)(intelligence)」の意味に近い。 「情報」を「information」の訳語に使うこと自体は20世紀初頭からなされていたが、軍事的な意味以外で広く使われるのは戦後になってからである。

このように、現在使われる「情報」は、元々別の意味をもつ語を、informationを訳す際に当てたものに過ぎない。 そのため、日本語の「情報」という語からは、情報がもつ性質を知ることが難しい。 「情報」をより的確に捉えるには、翻訳元である英語の「information」と、これに対応する動詞「inform」に着目する必要がある。