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Section 7.1 還元主義

日本語でも「『分ける』ことで『分かる』」というように、還元主義は問題解決の最も基本となる方針である。 Descartes(デカルト)も『方法序説』で、“問題のおのおのを、できるかぎり多くの、しかも問題をよりよく解くために必要なだけの小部分に分ける”ことを、科学の基本的な規則として示している[59][60]

また化学の分野では、Dalton(ドルトン)(1808)は、物質が原子(atom)という粒子からなるという原子説を提案した[48]。 Avogadro(1811)は原子説を発展させ、物質が分子(molecule)という粒子からなるという分子説を提案した[49][50]。 原子説や分子説により、物質を構成する原子や分子を分析することで、物質の性質を分析できることが明らかになった。

このように「分ける」ことが必要となる背景には、人間が記憶し処理できる複雑さの限界がある。 Millerによれば、人間が作業記憶で覚えておける事柄は、個人差はあるものの7個程度であるとされる[51]。 これより多くの事柄を記憶するには、複数の事柄をチャンク(chunk)と呼ばれる単位に関連付けて覚える、チャンク化(chunking)という方法が必要になる。 そのため、世界の状況を理解するために、世界の事象をチャンクに対応する単位に分割することが必要になると考えられる。