Section 11.2 定義
論理的な説明を行うには、説明で使う用語に定義(definition)を与え、他者との間で用語の意味に齟齬(そご)が生じないようにする必要がある。 定義は、ある記述\(B\)に対して用語\(A\)を与え、以降の説明において\(A\)を\(B\)の意味で使うことを示すものである。 例えば、本稿では「情報」「システム」「創発」などの用語を別の表現で言い換えることで、これらの用語を定義している。
従って、最も基本的な定義の表現は「\(A\)を\(B\)と定義する」「\(B\)を\(A\)と呼ぶ」などである。 数式ではこれを「\(A = B\)」と記すが、左辺が定義される用語であることを明示するために「\(A := B\)」と記すこともある。
定義を行う際は、定義する用語\(A\)の特徴を明確に示し、\(A\)ではないものとの区別を示す必要がある。 「\(A\)は\(B\)ではない」という否定の記述や、「\(A\)は\(B\)のためのものである」と目的のみを示す記述、「\(A\)は\(B\)の1つである」「\(B\)などを\(A\)という」といった例示のみの記述は、\(A\)と\(A\)以外のものを区別できない。 これらの記述は、用語\(A\)が何を指しており、何ではないのかが明瞭でないため、適切な定義とはいえない。
定義は、説明に使う用語の意味を共有して誤解を防ぐ目的の他、説明で頻繁に使う用語を短く言い換え、説明を円滑にする目的でも使われる。